あらすじ
謎の殺し屋「押し屋」を追う3人の男、「鈴木」「鯨」「蝉」。自らが果たそうとしていた復讐を"横取り"された「鈴木」。殺し屋として過去の因縁と決着をつけようとする「鯨」。この世界で名を上げたいと思う「蝉」。「押し屋」を巡り3人を中心に「悪」の世界に身を置く者達の争い。
基本、「鈴木」「鯨」「蝉」3人の目線から物語は進行する。3人が接触することは少なく、終盤までほとんどが別の場所で違った展開を見せる。そこから終盤、鍵を握る「押し屋」の存在が3人の物語を収束させていく。
三人の中で「鈴木」がいち早く「押し屋」と接触する。しかしそれがために鈴木は新たに別の苦悩を抱え込む事になる。「鯨」と「蝉」は一度、仕事上の接触がある。このことが「押し屋」を巡る争いにも大きな影響を与える。
基本静かな流れで話が進む。それぞれが己の目的のため淡々と"仕事"をこなしていたり、必要な情報を集めたり(主に押し屋に関すること)、様々な要因で苦悩していたりといった様子が描かれている。一部を除き登場人物同士が直接対峙するという場面が少ないため、派手なアクションや攻防といったものがほとんどない。しかしながら静かな中にもピリピリとした緊張感が漂う。
それは個々に登場するほとんどが殺しと"仕事"とするかまたは人を殺すという行為にためらいがない、悪党達の"業界"での話で彼らが直接対峙すれば、それは命のやりとりとなる危険性を含んでいるからである。
事実、それぞれが直接的に対峙し始める終盤には一気に危険でスリリングな展開を見せ始める。その結果、登場人物達はそれぞれの結末を迎える。
とそこで話は終わりではなく、ラストはある人物に関し、ある不可解な出来事で幕を閉じる。その現象は作中において何度か言及されていることと関連性があるように思える。そのとき彼の身に起きたことは一体何だったのだろうか。そして彼はその時、どういう状態だったのだろうか。その後どうなっていくのだろうか。
最後に残った大きな謎。これについてあれやこれや思案に耽り、余韻に浸る。すっきりした感じにはならないが、嫌いじゃない。むしろこの話にはふさわしいラストだったと思う。
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