puzzle (祥伝社文庫)



あらすじ

 長崎のある無人島のそれぞれ別の場所で3人の遺体が発見された。死亡時刻は限りなく近いがそれぞれの死因は全く異なる。偶然の事故か殺人か。二人の検事がこの謎に挑む。





 まず最初に全く関連性のないいくつかのエピソードや説話が紹介される。これがタイトルのPuzzle「パズル」におけるピースとなる。


 まずは物語の中枢となる事件の第一報。長崎の無人島、鼎島(モデルは軍艦島「端島」か)で3人の遺体が発見されたことを報じる新聞記事。


 そして
  • さまよえるオランダ人、またはさまよえるオランダ船という都市伝説の類の話。
  • スタンリー・キューブリックの新作映画「星々の彼方への旅」製作発表の資料。
  • 大正から昭和への元号制定。及びそれにまつわる「光文事件」についての逸話。
  • ボストンブラウンブレッドというパンと"三つのBの夜"の思い出話とボストンブラウンブレッドのレシピ。
  • 2万5千分の1の地図の作り方。

などどこからどう見ても、全く関連も、脈絡もない話が続く。そして事件の続報記事が再び紹介される。




 次の章では実際遺体がみつかった島に二人の検事が上陸し、この事件の真相を追う。二j人は検事の同期であり、一人はこの事件についてある程度の情報を有している。そのためその一人がもう一人に事件の情報を伝えながら(なぜか情報を小出しにしながら)、実際の遺体発見現場をまわっていく。



 ここで得られる情報は

  •  遺体が島の別々の場所で発見された事。
  •  死因は3人とも全く違うこと。
  •  死亡推定時刻は3人ほぼ一致していること
  •  1人だけは身元が判明している事。
  •  3人がそれぞれプリント紙を所持していた事。



 これらのピースをはめ合わせ1つの真実(作品では"絵"と表現されている)を探る。






 その中で一つの答えが示される。そこまでは大体想像がつく、というか状況的にそうなるとしか考えられない。ここで別の展開が開かれようなら、それはもう小説として不条理すぎる。




 それを受けて最終章で事件の全容が語られるが、それはある意味まさかの展開であった。この形を予測するのは難しい。推理や推測はほぼ不可能。さらに真実を知ってもまだ疑問が残る。これらの疑問はストーリー設定上致しかたない部分もあり、今となっては知りようもないことではあるが、もやもやした感が残る。





 結果として微妙な感じで読み終わることになってしまった。